外国人を専門職として雇用する際に最も多く利用される在留資格のひとつが「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」です。
本記事では、2025年現在の運用実務に即して、技人国ビザでの許可を得るための注意点を分かりやすく解説します。人事担当者や外国人本人の皆さまにとって、申請前に押さえておくべきポイントを解説していきます。
技術・人文知識・国際業務とはどんな在留資格か?
この在留資格の対象となる職種
「技術・人文知識・国際業務」は、主に知的労働を伴ういわゆるホワイトカラー業務に就く外国人のための在留資格です。大きく3つの分野に分類されます。
・技術分野:ITエンジニア、システム開発、機械設計、電気技術者など
・人文知識分野:法務、経理、人事、マーケティング、商品企画など
・国際業務分野:翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務(限定列挙)
これらは単なる労働力ではなく、専門知識や語学力を活かした職務に従事する必要があり、技能実習や特定技能のような単純作業とは明確に区別されています。
対象となる外国人の学歴・職歴要件
この在留資格では、以下のいずれかを満たす必要があります。
学歴要件:本邦もしくは外国の大学や短大卒業または本邦の専門学校(職業能力開発校を含む)卒業で、専攻と職務内容に関連性があること。以下、業種ごとの関連学問分野を一部列挙します。
・技術分野(自然科学分野)
物理学、生物学、人類学、経営工学、病理学、歯科学、農学等
・人文知識分野(人文科学分野)
語学、哲学、心理学、経営学、経済学、法学、教育学等
・国際業務分野に関しては外国の社会・歴史・伝統の中で培われてきたものでなければならず、より個別に判断されます。
実務経験要件:原則10年以上の実務経験がある場合、学歴に代えて申請可能(国際業務の語学系業務は3年以上で代替可)
例えば基本的には、「コンピュータサイエンスを専攻した人がシステムエンジニアとして就労」するというような関連性が必要です(最終学歴が本邦の専門学校卒の場合はより厳格にもとめられます)。逆に、英文学専攻者がITエンジニアとして申請する場合などは、注意が必要ですが、実際には大学を卒業したことをもって、自然科学分野及び人文科学に属する業務との関連性は認められることとなります。
申請でよくある不許可理由と実務での注意点
契約内容や待遇に不備がある
審査では、外国人が「日本人と同等以上の待遇」で働けるかが重視されます。給与額が極端に低い場合は原則不可(雇用契約が原則)であり、週の勤務時間が極端に少ない場合も注意が必要です。なお、業務委託契約での就労も可能ではあるものの、「継続的活動」か否かという観点から、業務委託契約書で疎明ができるような大企業との契約がある場合など、ある程度安定性・継続性のある就労であることが求められます。
労働契約書や雇用通知書の記載内容が曖昧な場合も不利に働きます。 社会保険加入、勤務時間、業務内容など、契約内容が法令に適合していることを明確に記載しましょう。
職務内容が単純労働と判断される
技人国は、あくまで「専門的・技術的業務」が対象です。たとえば、「通訳として雇用するが、業務の大半が受付やレジ対応」という場合、単純労働を含むとみなされ、不許可になる恐れがあります。そのため、外国人の来客比率や業務フロー、実際の業務割合、1週間のスケジュール、従業員リストなどを記載した職務説明書を添付することで、専門業務であることを丁寧に説明する必要があります。
付与される在留期間の判断基準
技術・人文知識・国際業務では、5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかの在留期間が付与されることとなります。3年以上の在留期間を得ることは永住権取得の前提でもあり、日本に在留する外国人にとっては大きな関心事と思われます。そこで、それぞれの期間が付与される基準を解説していきます。
以下の①~⑤が指標となります。
①申請人が申請時の在留資格における入管法上の届出義務(住所の変更や所属機関等に関する届出)を履行していること※転職の際の届出義務の不履行は特に注意が必要です。
②学齢期の子を有する親にあたっては、子が小学校、中学校又は義務教育学校(インターナショナルスクール等含む)に通学していること
③就労予定期間が3年を超えるもの※1年更新の契約社員よりも無期雇用の正社員のほうが有利になります。
④契約機関がカテゴリー1又はカテゴリー2に該当すること※上場企業ないし準ずる大企業など
⑤④以外の場合は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で3年又は5年の在留期間が決定されている者で、かつ、本邦において引続き5年以上「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行っていること※無職期間が3ヶ月を超える場合は「該当する活動」を行っていないと評価されます。
在留期間5年
上記の①②③のいずれにも該当し、かつ、④又は⑤のいずれかに該当すること
事例)在留期間5年が認められるか否かにおいて契約機関のカテゴリー(企業規模)は非常に重要な要素であり、弊所で対応させていただいた案件でも、上場企業に準ずる大企業であるため技術・人文知識・国際業務での在留1年目から在留期間5年が付与される事例もありました。
在留期間3年
下記1.2.3のいずれかに該当すること
1. ①②のいずれにも該当し、かつ、④又は⑤のいずれかに該当し就労予定期間が1年以上3年以内であること
2. 5年の在留期間を付与されていた者で、①又は②のいずれかの要件を満たさず、かつ、④又は⑤のいずれかに該当し就労予定期間が1年以上であること
3. 5年、1年、3月のいずれにも該当しないこと
事例)在留期間3年が認められるか否かにおいても契約機関のカテゴリー(企業規模)は非常に重要な要素であり、弊所で対応させていただいた案件でも、カテゴリーが3から2に上がった後の申請では新入社員の方でも3年が付与されるようになりました。※カテゴリー3の時代は入社後2回目のビザ更新でようやく3年が付与されていた。
在留期間1年
次のいずれかに該当すること(3月に該当するものを除く)
・契約機関がカテゴリー4(事業開始一期目の新設法人など)
・3年、1年の在留期間を付与されていた者で、①又は②のいずれかの要件を満たさないこと
・職務上の地位、活動実績、所属域間の活動実績等から、在留状況を1年に一度確認する必要があるもの※実務研修方式を伴うビザ申請において顕著です(コンビニや製造業での技人国など)
なお、1年後に確認しなければならない具体的な事情が存在しない限り、在留期間3年以上が付与される※この具体的な事情は公表されていません
・就労予定期間が1年未満であるもの(契約の更新が見込まれるものを除く)
在留期間3月
就労予定期間が3月以下であること
※在留期間が4ヶ月に満たない場合は「中長期在留者」に含まれないため、在留カードが発行されず、パスポートに証印が押されることになります。
まとめ
JAPAN行政書士法人では、技術・人文知識・国際業務ビザに関する申請サポートを多数手がけており、企業様・外国人本人双方から高い評価をいただいています。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。