今回は特定技能1号への移行を見据えている技能実習生を採用する企業様へ、技能実習の実技試験に不合格となった場合の運用に関して実例を交えてご紹介いたします。某企業様で、技能実習生が3年の実習期間を終える為、特定技能1号に移行を検討していた中、技能実習の技能試験に不合格になってしったというケースを耳にしたことがあります。このような場合、特定技能1号への変更はできないのでしょうか?
不合格になった場合
まず技能実習生が技能検定に不合格となった場合、技能実習期間中は一回に限り再受験が可能ですが、再試験も不合格だった場合は残りの在留期間満了時点で強制帰国となります。試験費用は技能実習生を受け入れている企業の負担であることなども踏まえると、技能実習生としても企業としても不都合な結果となってしまいます。例えば技能実習生が3年の実習期間を終え、企業と技能実習生で特定技能1号への移行を検討していたにも関わらず、技能検定不合格となってしまうことがあります。しかしこの場合でも、一定の条件を満たせば特定技能1号に移行することは可能となります。
不合格でも特定技能1号への移行が可能な場合
具体的な例を見ていくと、技能検定3級などの試験に不合格になってしまっても、一定の条件を満たせば特定技能1号に移行することは可能となっております。具体的には下記3種のパターンがございます。
①「特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」に合格
技能検定以外にも、分野ごとに異なる省庁が実施する特定技能評価試験という試験があり、これに併せて日本語能力試験(N4以上)に合格することで、対象分野の1号特定技能外国人として就労することができるようになります。この場合、改めて2つの試験を受験する事になり、申請人にとって負担となる可能性があります。
②「技能実習生に関する評価調書」を提出
実技試験においては不合格であったものの、特定技能所属機関(受入先の企業)と監理団体が「技能実習生に関する評価調書」を作成し提出すれば「技能実習2号を良好に修了」した証明書となり、上記の試験合格は不要となります。なお技能検定随時3級の受験が2017年11月以降から義務化されましたが、それ以前の技能実習修了者に関しては、評価調書を提出することが、実務上多く用いられています。
では、評価調書も提出できない場合はどうしたらよいでしょうか。その場合は、下記の要件を満たせば移行が可能となります。
③「申請人を技能実習生として受け入れていた」かつ、「技能実習法上の「改善命令」や旧制度の「改善指導」を過去1年以内に受けていない」
上記要件を満たせば「評価調書」も提出不要となります。この方法は認知度が低いものの、実務上は頻繁に使われています。
以上、技能実習生が技能検定不合格となった場合の対応策を3つ説明してきました。特定技能へ移行する技能実習生を採用する際、不明点がございましたら、行政書士などの専門家に相談してみることをおすすめいたします。
技能実習生を受け入れている企業様へ
最後に、技能実習生を採用する企業様が、引き続き特定技能1号に変更して受け入れるというパターンは少なくありません。その場合、ほとんどのケースで「技能検定3級合格証」や「技能実習生に関する評価調書」の書類提出は省略できる可能性があります。これから特定技能へ移行する技能実習生を採用する方にとって、今一度、制度への理解を深めるきっかけとなれば幸いです。